私は息子が生まれる前、ナチュラルクリーニングの講師をしていました。
ナチュラルクリーニングとは、自然素材を使った掃除方法です。結果的に人にも地球にも優しく暮らすことができます。
その中で、世界の洗濯や昔の洗濯について調べていた時にランドリーナッツ(ムクロジ)の存在を知りました。
どうやら石鹸がない時代や国では、ムクロジの実やサイカチの鞘を使って洗濯をしていたらしいのです。
(現在でも、世界を見るとそのような方法で洗濯している人たちもいらっしゃいます。)
しかし、その当時はこの洗濯方法は昔の話や遠い場所のことだろうと考えていました。
その後、さまざまなナチュラルクリーニングを試すようになり、最終的にはこの原始的な方法に落ち着いています。
我が家の洗濯は、ここ3年ほどランドリーナッツがメインです。
もくじ
洗濯をもっと楽にするために取り入れたランドリーナッツ
ランドリーナッツやウォッシュナッツとも呼ばれている無患子(ムクロジ)。
ここからは、ムクロジを使った洗濯方法や汚れが落ちる理由。
それからムクロジが減ってしまった理由や、私が洗濯にムクロジを使うようになった経緯などをお話ししていきますね。
我が家のランドリーナッツを使った洗濯方法を紹介
ムクロジというのは植物の名前です。
我が家では、ムクロジの木の実を乾燥させたものを購入し、晒しに包んで洗濯物と一緒に洗っています。
柔軟剤もいらなければ、オシャレ着洗いなどの別の洗剤も必要なく、全てこの実が洗ってくれています。
洗い終わったあとは洗濯物と一緒にピンチハンガーに吊るしておくだけ。
そして何度も使って実が粉々になれば土に還すだけ。なんて楽でエコな方法なのでしょう。
これほどまでに画期的な木の実はどこにあるのかというと、実は昔の日本ではどこでも見かけたようです。
現在はネパールやインド、インドネシアなどによく生息しているみたいですよ。
オーガニック店で販売されていたり、ランドリーナッツやウォッシュナッツ等で検索すればネットでも購入することができます。
ムクロジの実で洗濯できる秘密はサポニンにあり
しかし、なぜムクロジの実で洗濯ができるのでしょうか。不思議ですよね。その秘密はサポニンにありました。
サポニンとは、大豆や小豆などに含まれている成分で、茹でた時にボコボコと泡立つあれです。
過剰摂取は良くないのですが、抗酸化作用があり、血中コレステロールを下げ、免疫力向上の効果があ期待できるようです。
洗浄に関しては、サポニンは天然の界面活性剤ともいわれており、この泡のおかげで汚れが落ちます。
元々サポニンのサポはラテン語で石鹸を意味するそうですよ。
実際、ボウルにムクロジの木の実を入れて水を勢いよくかけるとよく泡立ちます。
(息子はよくこの実験をして遊んでいます。)
もちろん、石鹸や洗剤に比べれば泡持ちの良さなどは劣ります。
しかし、洗濯に関しては長時間泡立つ必要はないと思っています。
むしろ石鹸や洗剤が残る心配がなく、濯ぎが楽になっていいですよ。
洗濯を楽な家事にしたくて取り組んだナチュラルクリーニング
ランドリーナッツを使い始める前は、主に重曹やセスキ炭酸ソーダ、クエン酸などを使っていました。
そもそもそれらを使って掃除や洗濯をするようになったきっかけは断捨離でした。
もう10年以上前の話ですが、結婚してしばらくは私も当たり前のようにドラッグストアで洗剤を買っていました。
日常的に使う場所ごとの洗剤や月に1回程度の強めの洗剤、そしてそれらのストックたち。
しかし、収納扉の中にたくさんの洗剤ボトルが並んでいる姿を見るのも、毎回買いに行くのも嫌でした。
できるものなら無くしたい。そう思い調べてみると、自分で作れるものがたくさんありました。
これならボトルを並べなくていいし、買い忘れも心配ない。いつでも必要な時に必要な分量を作れる!
そう思いたって手作りするようになったのです。
ナチュラルクリーニングに目覚めて見えてきたもの
ドラッグストアに並ぶ数々の洗剤は、主に場所ごとで分かれていますよね。
例えば「お風呂用」や「トイレ用」、「キッチン周り」や「食器用」といった具合です。
もちろん、たくさんの研究やデータを元にその場所を掃除するのに最適な成分が配合されていると思います。
しかし、本当にそんなに多くの洗剤が必要なのでしょうか。
確かに〇〇用とは書かれていますが、成分表をみると他の場所に使えるものも多くあります。
少し時間を置いたりブラシを工夫したりすれば、天然素材でも汚れが落ちるのではないでしょうか。
そして、洗剤を使って汚れが綺麗になったとしても、その洗剤は一体どこへ行くのでしょう。
水で流し、排水管を通り、やがては海へ流れてそこに住む魚たちが食べることになりますよね。
その魚たちを食べるのは私たち。人間が出したものが結局自分たちに回ってくるのです。
また、私の家族は肌が弱かったり、合成の香料による頭痛などにも悩まされてきました。
それから、子どもが生まれたことも大きかったですね。
食べるものや肌につけるもの、身の回りのものにより一層気を遣うようになりました。
そうして取り組んだのがナチュラルクリーニングでした。
少しでも環境への負荷が少なく、肌にも優しい成分で掃除がしたい。
それを叶えてくれるのはやはり自然界に存在するものだったのです。
当たり前ですが、自然のものはやがて自然に還り、回り、循環するのです。
ナチュラルクリーニングを始めて、我が家からは洗剤のボトルが消えました。
汚れの種類や洗浄成分について理解を深めることで、場所に捉われず掃除ができるようになりました。
最低限の材料さえあれば、あとはいくらでも調整しながら作れますし代用もできます。
しかし、我が家の日常の洗濯はこの経緯を経てさらにシンプルになったのです。
それがランドリーナッツの存在でした。
洗濯が楽でエコになるはずのムクロジの木が減った理由
それでは、なぜそんなにも暮らしに役立つ木が日本ではほとんど姿を見せなくなってしまったのでしょうか。
ここからはさまざまな情報などに目を通して私なりに考えた意見を述べたいと思います。
ムクロジが減った理由は石鹸や合成洗剤の普及
大きな要因は、石鹸や合成洗剤そして洗濯機の普及でしょう。
日本では1933年にドイツから合成界面活性剤の技術を輸入し、製造が始まりました。
そして戦後、1950年代の半ば頃から洗濯機の普及と共に合成洗剤が一気に売れる時代となりました。
もちろんラジオやテレビなどの広告も広がって、モノを作っては売るという経済発展へとつながったのでしょう。
自然由来のものというのはしばしばデータ化するのが難しいものです。
どれほど効果があったとしても、商品として認定されにくかったり安定供給が難しかったりします。
しかし、人は科学的なデータがあるものや数字が出ているものに納得する傾向が高いですよね。
広告や宣伝はデータや数字を巧みに使って心理をついているので、人々がそちらへ流れてしまうのも仕方ないのかもしれません。
ムクロジを含むサポニンの魚毒漁法禁止
また、石鹸や合成洗剤の普及以外に、ムクロジがあまり使われなくなった原因として魚毒の影響もあるかもしれません。
これはムクロジに限ったことではないのですが、サポニンの魚毒として有名なものにエゴノキや椿があります。
毒と聞くととても怖いもののようですが、これは一時的に魚を麻痺させる方法なのです。
(その毒を使って釣った魚を人間が食べても問題はありません。)
このように、植物には棘や毒などを使って自分自身の身を守るものが自然界には多く存在します。
魚毒漁というのはその性質を利用して人間が昔から食料調達していた方法の一つです。
しかし、乱獲に繋がったり関係のない生き物にまで影響を与えてしまうことから、現在ではこの漁法は禁止されています。
もちろん、ムクロジを洗濯に使うことでもサポニンは流れます。しかし、洗剤と比較した時にどうでしょうか。
個人的には海洋に集積していくマイクロプラスチックや分解できない化学物質の方がよほど恐ろしいと感じています。
少なくとも日本で川や海の汚染が問題になったのは1960年代。合成洗剤が普及してからなんですね。
また、1970年代に琵琶湖で赤潮が大量発生したのも、洗剤に添加されていたリン酸塩が主な原因でした。
リン自体はさまざまな植物にも含まれていますし、また植物が成長するために必要な成分でもあります。
しかし、リンに限らず塩でも泥でも短期間に大量に流れ出てしまうと、自然のサイクルは追いつかなくなってしまうのです。
そのような全ての生態系や循環、長い時間での影響を考えたとき、私の洗濯はランドリーナッツを選択することでした。
洗濯を楽だけでなくエコにもするためにはどう使うかが重要
私は今、ランドリーナッツをメインに使って洗濯をしています。
それまでは、いろいろな材料で洗濯洗剤を手づくりていました。
また、購入するときはなるべく環境に負荷がかかりにくい商品を選ぶようにしていました。
しかし、何を使うかということももちろん大切なのですが、もっと大切なことがあります。
それはどう使うかです。
いくら分解されやすい洗剤だったとしても、膨大な水を使うのであればそれはエコとは言えないでしょう。
また、どれほど環境にやさしい成分だったとしても、汚れが落ちなければ使う意味がないでしょう。
私の洗濯方法は、基本的にはランドリーナッツを使って洗濯機で洗います。ほとんどのものはそれで綺麗になります。
しかし、実はメイン以外のサブ方法も存在します。それは、汚れによって洗い方を替えるということです。
例えば汚れのひどいものはそこだけ予洗いをします。
付着してすぐの汚れなら洗面所で手洗い石鹸で洗うだけでも取れる場合が多いです。
少し頑固な汚れなら洗濯板を使う時もあります。
また、布ナプキンのような染み込んだ汚れならセスキ炭酸ソーダでつけ置き洗いをします。
それから、寒い季節は浴槽に溜めたお湯を少し残しておき、最後に洗濯物を入れて足踏みします。
タオルや下着類の匂いが気になれば琺瑯容器に入れて煮洗いします。
洗濯物の素材や汚れの種類を見ながら、これらのサブを取り入れています。
「そんな丁寧なことできないよー。」とか「それは面倒だなぁー。」などと思われるかもしれません。
ナチュラルクリーニングを始める以前の私だったら、きっとそう思ったことでしょう。
しかし、慣れればなんの手間でもありません。洗濯や掃除は仕組みを理解していけば生涯役に立ちます。
汚れの性質や最適な掃除方法がよく分からないまま過ごしていると、無駄な洗剤を無責任に使ってしまう恐れがあります。
正直、機械や洗剤に任せっきりというのは、化学物質やお金を垂れ流しているようなものです。
更に、便利すぎる生活や人任せな暮らしが続く中で私が恐れていること。
それは「自分も地球の一部である」という循環の輪から遠ざかってしまうことです。
ランドリーナッツと呼ばれているムクロジについて補足
最後にランドリーナッツと呼ばれているムクロジについて、せっかくなのでもう少しお伝えしますね。
昔は日本でもそこら中に植わっていた木のようですが、最近はほとんど見かけませんね。
しかし、今でも神社などで立派なムクロジを見かけることがあります。
(私の家の近くの神社でも、とても大きなムクロジの木が守り神のように佇んでくれています。)
なんと、ムクロジは魔除けの精力を持つ木として有名なのだそうですよ。
また、ムクロジは漢字で書くと「無患子」。これは子どもが患わ無い(病気をしない)という意味が込められています。
そして、この木の実の中に入っている黒くて硬い種子は、数珠や羽子板の羽のおもりとして使われてきました。
これも魔除けや無病息災を願って使われてきたようです。
このように、自然との結びつきが深かった時代は、祈りや感謝の心を強く持っていた人が多かったように思います。
現代は、そういう心がいつの間にか薄れてしまっているような気さえするのです。
人々が自然の恵みに感謝し、必要な時に必要なものだけを分け合えれば、もっと世界は良くなると考えています。
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